「ライドシェア」で過疎地の交通問題は解決できない
2017年6月14日、名古屋で開催された「シェアリングエコノミーってなんだ!? ~ライドシェアから考える。~」にて、加藤博和名古屋大学大学院環境学研究科教授より、「持続可能で安全安心な『おでかけの足』のつくり方」というご講演を頂きました。
加藤教授は、「ライドシェア」により、「『おでかけの足確保』という公共政策的観点が満たされる保証もない(満たされると思っているなら脳天気)」と述べ、「ライドシェア」では、需要の少ない交通空白地や過疎地の交通問題を解決することはできないと指摘しました。
交通空白地や過疎地の交通問題の本質は、それらの地域に住むお年寄りや障がい者の方々は、「おでかけの足」を必要としているにもかかわらず、相対的な需要が圧倒的に低いためにバス・タクシーなどの民間の交通サービスが行き届いていないという点にあります。
つまり、必要性はあるのに、需要が低いために、供給が存在しないという点が問題なのです。
それでは、このような問題に対して、「ライドシェア」がその解決策になるのでしょうか。
ウーバーやリフトが行う「ライドシェア」は、完全自由市場において、自家用車を使って営利で旅客運送を行うものです。
そうだとすれば、需要の高いエリアに供給が集中し、需要の低い所への供給は少なくなります。
実際、ウーバーなどが営業する欧米では、高需要エリアの運賃を引き上げてそこに運転手を誘導しています。
また、4月に来日したサンフランシスコ・タクシーワーカーズ・アライアンスのマーク・グルバーグ氏は、需要は少ないがコストがかかる障がい者に対する旅客サービスが、ライドシェアのために危機に瀕していると述べています。
つまり、市場原理に基づく「ライドシェア」が、交通空白地や過疎地の交通問題の解決策になることは、本質的にありえない、ということがいえます。
この点、京丹後市では、ウーバーが過疎地の交通問題の解決に一役買っている、というような報道もあるようですが、これは完全な誤解といえます。
京丹後市で行われているサービスは、既に道路運送法78条2号で認められている、「公共交通空白地有償運送」によって実現されているもので、「気張る!ふるさと丹後町」というNPO法人によって運営されています。ウーバーは配車の連絡係のようなものをしているだけで、ウーバーによってこのサービスが行われているわけではありません。
結局、交通空白地・過疎地の交通問題を解決するのは、住民の知恵に基づく公共政策であり、加藤教授のご講演は、その点について長野県中川村の取組みなどを紹介しており、大変参考になります。